心不全パンデミックに備える

急性、慢性心不全別々であった心不全ガイドラインが2017年に一本化されました。
心不全は 
EF50%以上のHFpEF 
 40%未満のHFrEF
 40%から50%のHFmrEF
 一度はHFrEF であったものが回復した HFpEF improvedに分類される。
CS  クリニカルシナリオ 
CS1  収縮期血圧>140mg 血圧上昇 急に肺水腫
CS2  収縮期血圧100-140mg 腎不全 全身浮腫
CS3  収縮期血圧<100mg  低血圧 ショック
CS4 ACS
CS5 右心不全
HFrEF は心臓病、 HFpEF は全身病ともいえ、HFpEF は HFrEF の前段階ではなく別の病態ととらえるべきであるとされた。無症状期ステージAでの心不全リスク因子である肥満、高血圧、糖尿病、心房細動などが炎症や酸化ストレスを増大させ、血管内皮障害、心筋細胞の肥大と線維化を引き起こした結果、拡張障害と弛緩特性の低下すなわち拡張不全をきたす。HFrEF に有効なβブロッカー、ACE阻害剤、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬MRAの4つはHFpEF には無効で体液調整の利尿剤と予防の血圧コントロールのみが有効です。( 血管拡張剤は HFrEF の急性期血行動態の改善には使われるが、慢性期にはACE不可のときに推奨されるのみ)今後、新規心不全治療薬のイバブラジン(HR>70の際に有効)とアンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、 糖尿病合併心不全に対する有効性 が確立されたSGLT2阻害薬、重症心不全に対してsGC刺激薬ベルイシグアトなどが治療薬候補となる。
アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬 ARNI(サクビトリルバルサルタン)はネプリライシン阻害で、BNPの分解を抑え、cGMPを上昇させ、血管拡張作用を有する。半減期は12時間。認知機能障害、血管浮腫(咽頭違和感)が副作用としてあげられている。使用時はNT-proBNPを指標とし、腎機能、血圧、電解質をみながら400mgまで慎重にアップタイトレーションを可能なかぎり行う。BBにっくらべACEの10mgまでの増量は試みられていないことが多い。血圧に余力のない患者はBBとRASの両方同時アップレギュレーションはできないことも多い、まずはBBとの考えを変えていく必要がある。RASは腎機能との関係で more the better ではない症例もある。

古典的治療BB MRA RAS に追加するポイントはスタンダード患者では簡単かも。でも 
高齢 やせ 血圧90以下 mr・ぺフでは 目の前の患者の苦痛をとるためのサロゲートマーカー(代替マーカー)が必要、サロゲートマーカーで予後と関連することが明らかなのが運動耐容能、NYHAで代用十分  peakO2でもよい。NYHAの改善が悪いと思えば追加薬を検討 心不全はすべてうっ血=後方不全を持っており、これが患者の活動量を落としている liver stiffnessをうっ血の目安にする研究も進んでいる。 sGC刺激薬も うっ血の改善→cGMP→PKG→利尿の作用 予後を改善する別のマーカーとしてはリバースリモデリング LVEF LVESV。 40%未満の人が10%以上改善し、3-6か月後に40%以上をキープしている を目安にする。ARNIで2Wで早期に改善すると結果がよい、つまい早期の改善がえられる症例は良い結果がでる。イバブラジンは8か月で明らかに改善する。 QRSが狭く 軸が正常で aVRが高い人はなぜか改善しやすい

HFrEFの心不全の診察は左側臥位でのⅢ音、パンパンの左室に当たる血流音 Ⅳ音ふりしぼる心房の起こす血流音が有効で、間質の浮腫である下腿浮腫のみでなく、頸静脈の怒張を確認します。BNP100または NTーproBNP400以上を目安とし、拡張障害を示すE/e’ イーバイイープライム>10が拡張障害の簡単な目安です。
HFpEF患者の拡張能障害の診断基準は
①TRV三尖弁逆流速度>2.8 m/秒
②LAVI 左房最大容積指標 左房容積を体表面積で除したもの>34ml/㎡
③ E/e’>14 
④中隔 e’<7㎝/秒  側壁e’<10㎝/秒
のうち2つを満たす。
急性心不全の治療の留意点はカルペリチド(ハンプ)は前後負荷減少、ジギは徐脈作用が有用で強心作用を期待して使うことは現在はなし。サイアザイドは通常の1/4の量では代謝障害をきたさない。トリクロルメチアジド、ナトリックスなら0.5-1mg。ループ利尿剤はフロセミド、トラセミド、アゾセミドの順に半減期が短く、短いものほど交感神経反射亢進で頻脈が起こり、予後を変えない。低カリウムは不整脈やジギ中毒の危険を高める。サムスカは現在は長期予後は変えないため、急性増悪時のみ使用し、退院時はやめるというのがスタンダードであるが10%は入ったまま退院している。慢性心不全の最終段階stageD の場合、高齢者には心臓移植の適応はなく緩和ケアで対応する。ACPで繰り返し予後を見直す 
拡張型心筋症では カルベジロール 朝夕0.625mg-0mg→ 0.625mg- 0.625mg → 1.25mg- 0.625m→1.25mg-1.25mg → 2.5mg-1.25mg→2.5mg朝夕→3.75mgと微増させる 血圧が上昇していき 心拍が減少するのが効果のポイント

心不全の発症・進展の分子機構
心筋細胞におけるオートファジーは ストレス応答において臓器保護的に働く とっくにミトコンドリアを特異的に分解するマイトファジーが重要 マイトファジーが機能せず異常ミトコンドリアが心筋細胞内に蓄積すると酸化ストレス増加や ATP産生低下を介して 心不全に至る


SGLT2阻害剤
糖尿病以外の患者では 副作用発現頻度が少ない?

肥大型心筋症

500に人に一人の遺伝性循環器疾患。DCMに比し、サルコメアたんぱく質の変異を原因とする割合が高い。サルコメアは横紋筋収縮の最小単位 過剰収縮と弛緩障害 カルシウム拮抗薬、β遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬は予後を改善しない。最近サルコメア直接抑制薬が開発され、期待されている

弁膜症治療

左室の拡大により腱索が引っ張られるため (前尖後尖のテザリング)、 closing forseが低下、この病態では弁をかえても左室機能がよくなることはない。左室が大きくなることでおこるこのタイプのMRは心房が大きくなるタイプ(心房拡大で後尖が引き込まれ、ハムストリングスの低下=可動性の低下をきたす)より多い。このような弁に器質的変化がない状態で起こるMRを機能性MRと呼ぶ たとえばAfを除細動するだけでEFが少し改善することがある。その後経カテーテル的補助人工心臓イーペラ(IMPELLA)で心負荷をとることで回復することもある。 IMPELLA は10日間くらいしか持たないが、LA-LVの体外循環より手軽である。

Af⇔心不全 矢印はどっち向き?Af頻脈→心不全や弁膜症からAfをきたし、Afが長期に及び→心不全を起こすことは実臨床ではよくある。Afの10%にMR,TRを合併している。この場合3年で50%の人に心血管イベントが起こる。Af合併心不全でジギで自覚症状が消えたりする

MRは3パターンある。①左房拡大で前尖がLA側に引き込まれ(ハムストリング) 前尖側にジェット ②左房、左室拡大で弁輪が拡大し、中央に吹く③左室拡大で後尖が左室側に引き込まれ、後尖寄りに斜めにジェット
治療は重度または中等度のMRを軽度にすること。一つは心房細動、HEpEFに対する薬 もう一つはアブレーションで洞調律。

低侵襲治療

①TAVI (米ではTAVRタバー) 無理やり広げるので伝導障害が起こり10%にPMが必要になる。脳梗塞のリスクもある。1年死亡率10%。日本ではハイリスク群に行う。14Frのカテーテルで運べるようになっている。生体弁は60歳以下では10年で壊れる。高齢になると壊れにくい。
②MICS ミックス 小切開大動脈弁置換術 胸骨中央切開をせず、肋骨の隙間から内視鏡で MICSで僧帽弁形成術(腱索を人工腱索に変え、最後に人工弁輪を縫い付ける)に続き、Maze手術まで行うことも
③Mitral clip(クリップで僧帽弁の真ん中をつまみ、ずれをとめる、二つ口が開くことになる)ブロッケンブローで静脈から 卵円孔を通じてM弁をつまむ 
TRでは弁輪拡大が多いのでリングを使う、前尖をパッチで大きく拡大することも。心不全で右房が拡大し、TRをきたすことも。現状 孤立性のTRの手術は生命予後を改善しない。テクノロジーの進歩待ち。TRの人は心臓が大きい人が多く、季肋部で肝腫大を触れることも多い・GOT,GPTが上昇、PT-INRが伸びてくる ICD挿入でも逆流悪化 三尖弁のテザリング カテーテルで三尖弁輪を作ったり、人工三尖弁も開発中。Neo Chord  人工心肺のデバイスにcordをつけて引っ張る?

ペースメーカーやICDでの観察からsubclinical Af 24時間持続で脳梗塞の発症増加
HFpEF の方がAfの合併が多い
PSWP肺動脈喫入圧 肺動脈末端でカテを膨らませ右室からの圧を遮断すると左房圧に近い圧が計測できる これが大きいと左心耳の血流が低下する  心不全だけで脳梗塞のリスク上がる HFrEF はワーファリンを入れている? 肥大も高血圧もAfのリスク

Medical Tribuneより
HFpEFの基準 LVEF50%以上、BNP35pg/mLもしくはNT-proBNP125pg/mLを満たす。実臨床では 100と400を目安にするとも。

先天性心疾患

ASD 先天性心疾患の10% 二尖弁に次いで多い 多くは成人期まで無症状で 左→右シャント 心房細動、奇異性血栓、心不全をきたす PH・TR運動耐用能の低下 心房性不整脈
右心負荷の考え方
肺体血流比 Qp/Qs>1.5が手術適応  カテーテルでAmplatzer留置術( 2次穿孔のみ  38mm未満)

心エコーで確認すること
欠損孔の位置と大きさ(MRIでも) 短絡血流 肺体血流比 Qp /Qs  肺高血圧の有無 右室と右房の拡大 心室中隔の奇異性運動  右脚ブロック 肺動脈拡大
Qp 右室拍出量=π(RVOTd /2) 2× TVI RVOT ×心拍数
Qs 左室拍出量=π(LVOTd /2) 2 × TVI LVOT ×心拍数
2次孔開存 70% 1次孔開存 20% 通常のエコーで観察容易
静脈洞開存・冠静脈洞開存 右側臥位で傍胸骨右からや心窩部アプローチ

大動脈基部短軸断面,左室長軸断面を用い,断層図 上,それぞれの弁直上部の肺動脈内径(Dp)と大動脈 内径(Da)を収縮期時相において計測後,各部の中央 にサンプルボリュームを設定し,血流速度波形を記録 した.肺動脈内最大血流速度:Vp,大動脈内最大血流 速度:Vaと血流速波形の速度時間積分値(Velocity time integral, VTI)から求めた.

左心耳に対するカテーテル治療 TEEで左心耳内血流を測定 20m/sec以下でで血栓起こしやすい

心エコー
EFディスク法 4,2Chで内腔トレース
心内圧の情報は PCWPと RVSP(推定右室圧)の2つ
PCWP肺動脈楔入圧は肺動脈弁逆流波形から拡張末期圧較差が求められる。
右室拡張末期圧較差 肺動脈ー右室 
これに右房圧をたすと肺動脈拡張末期圧
肺血管抵抗が低いと肺動脈拡張末期圧は平均肺動脈楔入圧さらに左房圧さらに左室拡張末期圧に等しいと考えられる
右房圧は10mmHgとしていることがおおいが
・径21mm以上で 50%の呼吸変動あれば5 (10)
へしゃげていれば3 楕円で5 まるいと10以上
・呼吸変動明らかなら10 ないと20 軽度は15とのいろいろな考え方もある

左房圧↑=肺動脈楔入圧↑ 20≧になると心房細動の危険大