高齢者の急性の熱発・炎症所見チェックリスト

75歳以上かつADL低下や認知症がある患者が急性の経過で体温37℃以上もしくはベースラインから1℃上昇した場合。自分から訴えができないADL全介助の寝たきり高齢者を想定してもよい。または発熱ではなく血液検査で炎症所見としてもよい

高齢者の風邪は訴えが乏しく、Atypical is typical。主訴は 肺炎や尿路感染でも様子がおかしいとか動けないがほとんど。バイタルをとってみると37℃以上の発熱やわずかな低酸素血症といった異常があることが多いが、それに準じる訴えは本人からない事が多い

細菌感染3トップ
①肺炎
□ベースラインからのSpO2の変化、呼吸数の変化、肺音はcrackleを探さず、呼吸音の左右差を確認
□嘔吐のエピソード(なくてよいがあれば肺炎より嘔吐の原因検索の方が重要)□胸部レントゲン 側面の下肺背側の浸潤影 喀痰培養、疑いなら血液培養

②尿路感染
□CVA叩打痛 左右差を確認
□結石や泌尿器系悪性腫瘍(あれば膿尿なし:尿検査で WBC<5/HPFでもよし)
□尿検査、尿培養、人工物が体のどこかにはいっていれば血液培養

③胆道系感染
□胆管や胆嚢の結石
□季肋部叩打痛は左右差を 黄疸は頭皮の生え際を確認
□先行するセフトリアキソン使用歴 使用後数年で発症あることも
□胆道系酵素、総ビリルビン、腹部エコー、人工物がどこかに入っていれば血液培養

④蜂窩織炎
□なぜか教えてくれない皮膚の発赤
□浮腫を起こす薬剤 病歴 リンパ浮腫(乳がんの手 婦人科がんの下肢、脳梗塞の麻痺側はむくみやすい
□蜂窩織炎(皮膚軟部組織感染) と思ったら仙骨・踵部の褥瘡と帯状疱疹の水疱の有無も確認、糖尿病があれば足趾の観察

⑤憩室炎
□憩室炎の既往、大腸内視鏡検査での指摘の既往
□訴えがなくても丁寧に診察すると腹部のピンポイントの圧痛(再現性のある表情の変化)
□自然に良くなった腹痛と微熱の病歴 selfーlimitedな憩室炎の既往
□腹部造影検査CT 明快に繰り返している病歴があれば不要
□下痢・軟便があれば1年以内の抗菌剤使用歴の確認とCDチェック

⑥インフルエンザ
□シックコンタクト 院内発症の有無 子供との接触
□迅速検査

⑦子宮瘤膿腫
□下り物のの匂い、色、量の変化
□下腹部痛 恥骨結合くらいのかなり下部
□子宮の疾患、とくにがんの既往(なくてもよい 加齢による後屈でもよい)
□検査 腹部エコー、造影CT

⑧化膿性耳下腺炎
□脱水のエピソード
□耳下腺の腫脹・圧痛左右差
□唾液腺エコー

⑨感染性大動脈瘤
□AAAや動脈硬化性病変の既往 腹部の圧痛はまずない
□造影CT 血液培養(Helicobacter cinaediを意識して長めに培養を依頼)

⑩非感染症
偽痛風
□膝の熱感は左右差を確認 股関節の腫脹・熱感(なくてもよい、他動的に動かして嫌がるか)
□検査:見た目の全身症状のわりにCRP高値 関節穿刺してもよいが、全身状態が良ければNSAIDsで著効を確認してもよい
□よくならなかったらリウマチ性多発性筋痛症PMRも検討 (特に血沈>100mm/時のとき)

crowned dens syndorome
□首の痛みでもよいが、首を動かさない、首を動かすと嫌がるでもよい
□検査:CT(骨条件)CTのみで診断するときは除外診断 頸椎骨髄炎、髄膜炎、硬膜外膿瘍かも

人工物感染症 バイオフィルムを形成しやすく感染症としても難治性・菌量が多くなくても感染が成立するため、局所症状・所見に乏しいのが特徴

加齢性変化の大きい部位にも菌は付きやすい 検査は過剰診療になりやすく難しいが、経過によって迅速に既往修正できるように チェック病変として日々変化がないかを確認することはきわめて重要。感染症の点からは加齢性変化部位=人工物と考えてもよい

人工物総チェック
□人工関節
□人工血管
□人工弁 TAVI  ペースメーカー
□骨折後 ボルト、プレート
□シャント、CVポート

加齢性変化の大きい部位
□骨粗鬆症・未指摘圧迫骨折(→骨髄炎)
□変形性関節症(→化膿性関節炎)
□心臓弁狭窄・逆流(→感染性心内膜炎)
□大血管動脈硬化部位(→感染性動脈瘤)