原因が確定できないことも半数以上、脳血管障害、認知症、炎症性疾患も病因になる
ABの脳内への沈着が進みMCIの時期にそれが上限に近づくとともにタウ蛋白の蓄積が始まる。その影響から海馬の過活動が生じてんかん性活動が増加するとともに認知機能の障害が進行しているのではないか。 ABの蓄積で異常な神経活動やシナプス機能障害が生じ、代償性の抑制性反応として神経回路障害が起こる、一方で 異常な神経活動はABの蓄積を促進し、てんかん発作を誘発することで神経回路障害を引き起こす。
てんかん性脳波が認められたAD群ではで認められないAD群より認知機能の低下が早い。
高齢者てんかんでは小児てんかんと異なり、初回発作後に2回目の発作が出現する確率が高い。このため国際抗てんかん連盟ILAEでは 高齢者では発作が一回だけでもてんかんとみなして治療を開始してよいとされている。
多くはけいれんを伴わない複雑部分発作(意識減損焦点発作) 一点を見つけてボーっとしている。 口や手の自動症、何をしていたかおっぼえていないときがある。高齢者では小児に比べて、自動症が非常に軽微で目立たないことに留意が必要。発作が目立たない反面、発作後のもうろう状態が遷延しやすく、エピソード記憶が抜け落ちていることがあるため認知症と見誤られる(退職後夫ともに長期旅行したことを忘れている)。
脳波検査で右側頭葉に棘波。長時間ビデオ脳波検査で症状が出現し側頭葉てんかんの診断確定。 スマートフォンで撮影。
高齢者てんかんでみられるな発作型とその治療
意識減損焦点発作 (旧名 精神運動発作 複雑部分発作)
症状 前兆
意識減損、自動症、動作停止、一点凝視、発作後もうろう 発作持続時間 30秒から3分 焦点部位 多くが側頭葉、特に海馬
原因 脳炎後、外傷後、変性疾患に合併する場合や原因が同定できない場合など
ピットフォール 認知症と誤認しないようにする 抗てんかん薬 焦点発作に効果のある薬剤 ぺランパネル レベチラセタム ラモトリギン ラコサミド カルバマゼピン
焦点から両側強直間代性発作 旧名 二次性全般化発作) 運動・感覚症状から始まる全身性けいれん、先行する焦点発作症状が明らかでない場合も 60-90秒が多く、前頭葉が多いが、どの皮質領域からも伝播、進展もみられる 脳卒中後てんかんに多い。ピットホール 全身けいれん発作がすべて全般発作ではない 抗てんかん薬は 焦点発作に効果のある薬剤で同様。
DLBと複雑部分発作の臨床症状
認知症の中でもDLBは 複雑部分発作と症状が類似するといわれている
複雑発作では発作中の記憶はないが、基本的に発作の前後は意識がはっきりしていることが多いので、家族が具体的に何日のことを覚えていないと話すことが多い。一方ADの場合は認知機能の低下が緩徐に進行するため、記憶障害の発現時期は漠然としている。 DLBは難しくて、中核的特徴の認知機能の変動と ボーっとしているのが数分のみのこともあるため、複雑部分発作との鑑別はADより困難になる。 臨床診断基準の支持的特徴に失神・原因不明の意識障害とあることも複雑部分発作との類似性を示しているといえる。側頭葉てんかんは発作が頻発してくると全体的に覚醒レベルが低下し、発作時と間欠時の区別がつきにくくなるのでますます認知症との鑑別が困難になる。厳密な鑑別には睡眠ポリグラフ検査が必要になるが、臨床症状では、典型的なDLBではなぜそのような異常行動をとったのか患者が説明できる。睡眠中の異常行動に対し、覚醒させるとすぐに夢で反応していたと答えたりする。睡眠関連てんかんの場合はそうした説明ができないし暴力的にはならない てんかん性の幻視も多くはなく、子供のころの懐かしい記憶が頭に浮かぶ というのが典型的。DLBの場合はありありとした幻視。後頭葉てんかんで多いのは、要素的な視覚機能の異常で 光がぱっと見えたり、ミラーボールのようなものがゆっくり動いていったりする。変形視もてんかん性の幻視の特徴で、人の顔がぶわっと大きく見えたり小さく見えたり、歪んだりする。
ADのてんかん併発は10%。DLBではADより自動症を疑う症状の頻度が多い。抗認知症薬にはてんかん発作の閾値を下げる効果があり、実臨床下では合併した場合は、抗認知症薬を認知機能への効果が期待できる限りは継続し、適切なてんかん治療薬を追加することが重要。ぺランパネルはNMDA受容体に影響を与えることなく、シナプス後膜に存在するAMPA受容体に選択的に作用して、ニューロンの興奮を抑える。睡眠への影響もあり、急に血中濃度が上がるのでさあね寝るぞというときに。眠前一回服用でよい結果も 高齢者ではゆっくり増量。まずは2mg 4W投与で忍容性を確認。