遺伝する癌 しない癌 法研

沖田 洋美著 新宮外苑ミネルバクリニック

体細胞の遺伝子変異 遺伝しない
変異してがん関連遺伝子になる ①がん遺伝子②がん抑制遺伝子③DNA修復関連遺伝子 200個くらいある

生殖細胞の遺伝子変異 精子や卵子やそのもととなる細胞 遺伝する
遺伝子検査 = 生殖細胞系列遺伝子検査 この生殖細胞が持っている遺伝子変異を検査するもの

生殖細胞はその変異を受け継いだ子供の体の全ての細胞に同じように変異が存在するので白血球細胞のDNAを分析する この白血球細胞にも遺伝子の変異が遺伝しているから

DNAデオキシリボ核酸という物質 一列に並ぶこの一セットがゲノム
DNAのところどころに 人の特徴を作る設計図のような情報=遺伝情報が書かれた部分がある これが遺伝子
生殖細胞の持つ一組23本の染色体のDNAがゲノムということ
どの人も父親由来のゲノムと母親由来のゲノムの2セットのゲノムを持つ

DNA ①構造遺伝子(タンパク質合成の設計図)②遺伝子がどんなふうに働くかを調整する 調整領域 ③スペーサー 無意味な領域

生殖細胞ができるときは減数分裂で 染色体の数が23本しかできない その23本が受精によって 同番号の似たもの同士でペアを組み、46本の染色体をもつ一つの受精卵になる 父親由来の染色体と母親由来の染色体は交差して、染色体の組み換えが起こる

2本は性染色体 44本は常染色体
人のDNAは父方、母方 それぞれ30億対もの塩基対がある
60兆個の細胞からなる
2003年 30兆個の塩基配列を読み取った 遺伝子はDNAの特定の場所に28000個程度ある 構造遺伝子と調整領域は1%に過ぎない

配偶子(精子または卵子)は46本の半分23本の染色体をそれぞれ持つ この時対になっている染色体のどちらを選ぶかで2通りの23乗の組み合わせ 減数分裂のときに 父由来の染色体と母由来の染色体は交差して、染色体の組み換えが起こるので これを考えると 染色体の組み合わせパターンは無限一卵性双生児は遺伝子は全く同じであるが、遺伝子の持っている働きをオンにするスイッチにより 全部の遺伝子が同じに働くわけではない

国立がんセンター運営の がん情報サービス というサイト

BRCA1 BRCAの病的遺伝子変異 ブラッカ 男性では前立腺がんリスクとなる がん抑制遺伝子 400人に1人もつ
遺伝性乳がんの遺伝子の変異は TP53 PALB2 PTEN などの変異もあるので BRAC遺伝子変異を調べて正常であった場合、家族歴がないならともかく、家族歴でHBOCの特徴を満たしている場合は、家系内の癌の根本的原因が明らかになっていないだけで遺伝性ではないとは言えない。

ブラッカと他の遺伝子変異を合併している場合やこれに異常がなくても、遺伝性乳がんに関係すると報告される遺伝子変異が多数あるので、これらを多重遺伝子パネルと呼ばれるセット検査にてして一度に検査してしまう 方法が開発された。2019年度 保険収載を目指して進行中。国立がんセンターでは治験中。 67万(47万)

手術で生検した乳がん組織の免疫染色で調べ、遺伝子の解析の分類に当てはめていたが、保険適応で変わる可能性ありBRCA1遺伝子変異の乳がんのうち80-90%の確率でトリプルネガティブ PARP阻害剤 オラパリブ(商品名リムパーザ)BRAC遺伝子はDNAの2本ともが傷ついたときに互いに修復する働き(相同組み換え修復)がある

分子標的薬 がんが持っている特徴的な遺伝子やたんぱく質の変化をターゲットにして、ピンポイントで狙い撃ちにする
抗HER2薬 正常な細胞にもあり、増殖調整に関係 過剰発現で増殖コントロールができなくなる

トラスズマブ(ハーセプチン) ペルスツマブ(パージェスタ)
カドサイラはトラスズマブに抗癌剤のエムタンシンを結合
ラパチニブトシル(タイケルブ)はHER2蛋白の働きを抑え、細胞の内部に入って増殖を阻止するチロシンキナーゼ阻害剤
後半二つは 転移再発の場合のみ トラスズマブ心不全や肺障害 併用する抗がん剤も必要で副作用の軽減に至らない

CDK4/6阻害剤 細胞周期を調整するサイクリン(蛋白の一種)とサイクリン依存性キナーゼ パルボシクリブ(イブランス)CDK4/6を選択的に阻害して細胞周期の進行を抑制する。高エストロゲン薬のフルベストランとの併用で承認

遺伝性大腸線種症
リンチ症候群
肥満関連遺伝子 エネルギー代謝に関連 50-100個見つかる
β3アドレナリン受容体 β3AR  中性脂肪の分解の抑制し、基礎代謝量を低くする 肥満遺伝子とも倹約遺伝子ともいうタイプとそうでないタイプがある

脱共役タンパク質1 UCP1 β2アドレナリン受容体β2AR などの遺伝子も
これらには塩基が一つだけ異なる2つのタイプがあり、そのどちらであるかによって、肥満になりやすいかどうかが変わってくる。

褐色脂肪細胞1% 熱を作り出して体温維持をしたり、食事からの余分なエネルギーを燃やす 白色脂肪細胞 体内に余ったエネルギーを中性脂肪として体内に蓄積する 節約遺伝子があれば褐色脂肪細胞の働きが悪くなり食事制限をしても痩せにくい 日本人は1/3の人が持っており、少し食べたべ過ぎただけで太る人が多い
脱共役タンパク質1の倹約タイプも同様 β2ARの倹約タイプは反対で基礎代謝量が増え太りにくい

遺伝病の種類 遺伝病≠遺伝する病気 遺伝子の突然変異によっておこる病気や染色体の数や構造の異常などで起こる病気のこと

単一遺伝子疾患 メンデル遺伝病

AD ほとんどの遺伝性の癌 四肢短縮症、ハンチントン病
AR 生命にかかわる重い病気が多いフェニルケトン尿症
X連鎖 (血友病)
多因子遺伝病
染色体異常 XO ターナー XXY クラインフェルター症候群

ミトコンドリア病 ミトコンドリアは卵子の細胞から受け継がれる母親からのみ遺伝 筋肉、心臓、脳に異常 

体細胞の遺伝子に後天的な変化が起こるために引き起こされる体細胞遺伝病 がん

卵巣がんの遺伝性 BRCA1,2の変異の有無、大腸がんの一種で リンチ症候群の原因遺伝子(MSH2やMLH1)の変異があるかを調べる遺伝子検査を行うことが有効 娘なら卵巣がん、乳がん、すい臓がん、大腸がん 息子なら前立腺がん、乳がん、すい臓がん、大腸がんのリスクとなる

BRCA1,2だけなら12万 網羅的多形遺伝子パネルなら18万 乳がん、卵巣がんに関する遺伝子では16の乳がん関連遺伝子を含む21の遺伝子が関係していることが現在までに分かっている 乳がんの90%以上は 遺伝性でない

オラパリブの適応検査のため、BRCA1,2の 転移性、再発性乳がんに対する保険適応 2018年6月より

遺伝子検査の種類

病原体遺伝子検査 例 インフルエンザウイルスPCR 外子宮口の細胞診で前がん状態とされた際に上皮内細胞中のHPV-DNA、結核菌類

体細胞遺伝子検査 その検査がどのように患者さんの利益につながるかじっくり話を聞いてから
一定条件満たす際に指定の医療機関で保険適応となる
肺がん EGFR ROS1 Kーras     ALK??は保険外??
すい臓がん
大腸がん EGFR RAS K-rasなど

遺伝学的検査 (生殖細胞系列遺伝子検査) 不変性、予測性、共有性(親、兄弟姉妹、子に関わる)

例 BRCA1,2 甲状腺がんRET

易罹患性検査 高血圧、パーキンソン病、アレルギー疾患、認知症、自閉症、うつ病、などの遺伝要因と環境要因が合わさって発症する病気である多因子疾患についても遺伝要因の検査が可能 低いレベルの根拠

脊髄小脳変性症、家族性大腸線種症(APC) 家族性地中海熱 ウィルソン病、UGT1A1遺伝子多型、リンチ症候群などは 易罹患性検査の上に書いた分に入る

放射線に対する感受性 DNA修復遺伝子に変異のある遺伝病の患者や保因者は放射線感受性が高い かかわる遺伝子は複数で複合的に影響、TP53遺伝子の変異のリーフラウメニ症候群の人は放射線治療禁忌

ネットで宣伝する遺伝子検査 DTC遺伝子検査は 2-3万 リスクがわかるだけ 英米では遺伝子検査とは区別 遺伝子検査と呼ぶな
複数の遺伝子が複合的に絡み合って影響しあっているので、原因の遺伝子が特定できないので、DTCは細胞からDNAを取り出し、DNAチップと呼ばれる分析器で遺伝子の中から、病気や体質に関係するSNP(スニップ)があるかどうかを調べるマーカー検査で遺伝子そのものを検査しているわけではない

新型出生前診断NIPT 10週以降 妊婦の血液中には胎児の染色体の断片が含まれていることが判明、これを高速のDNAの塩基配列を読む機器を使って胎児の染色体数の異常を検出する マーカーより精度が高い 91-100%の感度 99.1%の特異度
これまでは母体血清マーカーテスト 21トリソミー18トリソミー開放性神経管奇形 精度70-80%で リスクのみがわかる 確定診断には羊水や絨毛検査
確定診断で染色体異常があるとされた妊婦のうち95%が中絶を選択  臨床研究から一般診療への方針決定

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