PDは脳幹、基底核
PDDは加えて大脳辺縁系
DLBでは大脳辺縁系、大脳皮質 が悪くなる
DLBの処方
新横浜フォレストクリニックの院長先生のブログから以下
レビー小体型認知症 薬の替え方
幻覚と誤認妄想(我が家ではない)、夜間異常行動、注意と覚醒能力日内変動、動作緩慢と前傾姿勢、右手の震えはそのパーキンソン病の運動症状 、体幹が左へ大きく傾斜して、前傾姿勢でトボトボと歩く
イスに座るとき、手すりにひっかかる(視覚認知の問題か?)
右手の静止時のふるえ(振戦)が顕著。
臥位→立位で、25~30mmHgの血圧低下。
<前医処方>
① ロチゴチン(ニュープロ🄬) 9mg/日
② トリへキシフェニジル(アーテン🄬) 2 mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝・昼・夕3回
④ アムロジピン2.5mg 朝・夕2回
⑤ ラニチジン 75mg 眠前 1回
※パーキンソン病運動症状に①②はよく使われる薬でこの量は過量ではなく、むしろ少ない量です。③は幻覚・妄想を抑えるための処方だが、全く効果がないようです。
※右手のふるえは強いものの、①②で幻覚が悪化していると推定されたために減量して中止。抑肝散も効いてなさそうなので減量して中止。眠前のラニチジンも夜間の症状を悪化させているようなので中止。
<1回目の処方変更>
① ロチゴチン2.25mg/日
② ゾニサミド50mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝夕2回
④ オルメサルタン5mg
⑤ シロスタゾール(プレタール🄬)50mg 朝夕2回
<1週間後の再診時>
変更後最初の2日は幻覚・妄想はなかったが、3日目から前と同じように復活
脈拍が異常に速くなり、動悸のため眠れなくなったそうです。本人もプレタール🄬を始めてから眠れなくなったと強く訴えてました
本質的にはまったくといっていいほど良くなっておらず、むしろ悪化。
動作レベルは以前と変わらず。ふるえは軽減。以前よりも覚醒レベルが悪くなり、ぼーっとしている感じでした。
収縮期血圧は臥位で130~135、立位で112~135でした。
応急的に、グルタチオン600mgとシチコリン500mgを点滴注射。
点滴注射後は、動作歩行も速くなり、意識がしっかりしていました。
<2回目の処方変更>
① レボドパ・カルビドパ 50mg1日2回 朝・昼
② クロナゼパム0.25mg 1日1回眠前
③ オルメサルタン5mg 1日1回夕食後
※ロチゴチン、ゾニサミド、プレタール🄬は明らかに悪く作用しているため中止。抑肝散も全く役にたっていないため中止。
※パーキンソン運動症状に代わりの薬としてレボドパ配合剤ごく少量。レム睡眠行動異常・不眠にクロナゼパムごく少量。八方塞がり苦肉の処方変更。
<2週間後の再診時 >
幻覚・誤認妄想はほとんどなくなりました。夜も眠れているそうです。
日中もしっかりした状態が続いているようです。
姿勢も良くなり、動作も速くなり、覚醒レベルも非常によくて驚きました。
右手のふるえ (静止時振戦)は相変わらずのようです。
パーキンソニズム優位型のレビー症であり、最初からコリンエステラーゼ阻害薬を使うという選択肢は微塵もありませんでした。
この症例はすでに体軸性の筋強剛と体幹傾斜・姿勢異常が、おそらくロチゴチンによって引き起こされていたからです。
コリンエステラーゼ阻害薬を使う事で、体軸性筋強剛と姿勢異常が顕著に悪化していったケースをあまりにも多く経験してきたからです。
その数々の経験は筆舌に尽くしたいほどの悔しさとして、今でも私の頭に刻まれているからです。
レビー症にドパミンアゴニストは絶対禁忌にすべきでしょう。これだけ微量のロチゴチンですらここまでひどい精神症状が出るのですから。ロチゴチン以外のドパミンアゴニストだとさらにひどかったであろうと推察されます。
ゾニサミドは今年に入って、75歳~85歳の高齢者女性に数例処方しました。レビー症ではなく、パーキンソン病でしたが、結果はすべてNG。
高齢者女性には抑制系の副作用が出やすく合わないようです。
プレタール🄬(シロスタゾール)もやはり、高齢者女性では顕著に頻脈が出現しますが、ここまでひどいのは初めてでした。おそらく心臓がかなり悪いのでしょうか?以前も申しましたが、高齢者の女性はほとんど心不全です。
プレタール🄬は心不全には禁忌です。心不全の上にレビー症やパーキンソン病のために心臓の交感神経が脱落しているわけですから厳しいでしょう。
PSP
PSPの易転倒は姿勢反射障害により姿勢の保持が不安定となることに加えて、前頭葉性認知機能障害により危険に対する注意力や自己や周囲への洞察力が低下しているためでもある。後方に倒れ易く転倒時に上肢による防御反応が乏しいために 顔面や頭部に外傷を負うことも多い。動作緩慢に見えるがスイッチが入っていないだけの前頭葉性の無動・無言のために普段は無動で車椅子を使用していてもスイッチが入ると突発的 に立ち上がり転倒することがある(ロケットサイン)。歩行は開脚した不安定な歩行、すくみ足歩行や加速歩行がみられる。初発症状としてこのような易転倒性や歩行障害に ついで動作緩慢、構音障害、これより少ないが精神症状、眼球運動麻痺で始まることも ある。注視麻痺(核上性眼球運動麻痺)は最もよく知られている症状であるが初期には みられないことが多い。垂直方向、とくに下方の注視麻痺が最初に起こり、次いで上方 視が制限される。進行すると水平方向も障害され随意的な眼球運動はみられなくなる。 パーキンソニズムは振戦を伴うことは少なく無動、筋強剛が目立ち、四肢よりも頸部や 体幹に強く現れる(体軸性固縮)。初期には四肢の筋トーヌスはむしろ低下しているこ とがある。末期になって頸部、体幹の固縮が高度に及ぶ場合でも四肢の固縮は軽度であ ることが多い。動作は緩慢で瞬目の少ない凝視したような表情を示すようになる。末期 になると首が後屈して強直する症状(項部ジストニア)がみられ、パーキンソン病で前屈姿勢となるのと対照的である。パーキンソン病に較べて PSP のパーキンソニズムはレ ボドーパの効果が乏しい。 構音障害や嚥下障害(仮性球麻痺症状)もよくみられ、80〜100%の高率で出現する。構音障害は初期から現れることが多く、発話不明瞭であることのほかに小声、吃音、爆発性、早口などがみられる。嚥下障害は末期に出現することが多い。 神経症状とならんで精神症状が出現する。時には精神症状が先行することもある。PSP の精神症状は多彩で、病期によっても現れる症状が異なる。なかでも感情障害と幻覚・ 妄想状態が現れやすい。感情障害としては抑うつ状態が病初期に比較的によくみられるが、強い抑うつ感情や罪業感に乏しく、意欲低下や自発性の減退が現れやすい。幻覚・ 妄想は経過中にしばしば現れ、稀には幻覚・妄想で発病することもある。幻覚は器質性の色彩が強く、幻視であったり、せん妄状態に伴う幻聴であったりする。妄想は被害的な内容が多い。人格水準も低下するので、嫉妬妄想や性的な異常行動を示すことがある。幻覚・妄想に支配されて精神運動興奮などの言動の異常を示すことがある。これらは一 過性であることが多く、統合失調症の幻覚・妄想のように確個として体系化し長く続く ことはない。せん妄状態は神経症状の顕在化した時期に現れることが多い。神経症状が 進んだ時期になると挿間性の混迷状態がしばしば観察されるようになる。この挿間性の昏迷状態は病期が進むと無動・無言様状態に移行してゆく。この他、睡眠障害として総睡眠時間が短くなり、除波睡眠、睡眠紡錘波の減少が知られている。 人格変化と認知症状はほぼ必発である。人格変化は病初期には、何か人が変わってきた というような印象をもたれることが多い。やがて、物事に対する視野が狭くなり、人の言うことを聞き入れようとしない、自己中心的な行動をする、興奮しやすく、怒りっぽ くなる、あるいは、子供っぽくなる、内容のない上機嫌(多幸)などが現れる。進行す ると意欲が低下し、周囲に対して無関心となり、物事に対する興味を失って無感動でぼ んやりとした生活を送るようになる。このような人格変化、人格の退行に平行して特有 な認知症状が現れる。 PSP の認知症のタイプは従来から皮質下性認知症であるとされ、大脳皮質性の認知症と は異なり見当識障害や記銘力障害は軽く、高次機能は比較的に保たれているが、それを活性化し、有効に利用する能力に問題があるタイプの認知症(皮質下性認知症)である。このような皮質下性認知症の特徴は前頭葉症状と類似しており、病理学的 にも PSP ではタウ異常構造物とグリーシスが前頭葉に広がっている。さらに PSP では、神経心理学的な検査で注意力の低下、言葉の流暢さの障害、抽象思考や理解の障害、把握反射、視覚性探索反応(目の前のものを掴む)、模倣行動(指示されていないのに目の前の動作をまねる)などの前頭葉徴候が高頻度に出現する。これらから今日では PSPの認知症は前頭葉性の認知症として捉えられており、FTLD に分類されている。以上のような臨床特徴を踏まえていくつかの臨床診断基準が知られているが、多くの非定型的 PSP が存在することからいずれも感度は低い。
臨 床 特 徴 PSPの 臨 床 特 徴 は, 易 転 倒 性, 垂 直 性 核 上 性 注 視 麻 痺, パーキ ンソニズム, 前頭葉徴候 ・前頭葉性認知障害, 構音 ・嚥下障害 などで ある. これ らについて以下 に概説 す る.
(1) 易転倒性 PSPの 第 一 の臨床特徴 は, とにか くよ く転 ぶ ことで あ る. パ ーキ ンソン病 と違 って初期か らよ く転び, 転 び 方 が ダイナミックで, バ ラ ンスを失 った時に上肢 で防御 す る とい う反 応が起 きないた め, 顔面 直撃 によ る外傷 (顔面 の皮下血腫 あ るい は慢性硬膜下血腫 な ど)を負うことが しばしばである. PSPの半数 以上 は発症1年 以 内に転倒を繰 り返 す と報告 されてお り、NINDS-SPSP の国際臨床診断基準 で も”発 症1年 以 内の転倒 を伴 う姿 勢 の著明な不安定 さ”は 必須項 目の1つ に挙 げ られてい る。PSPで はPDに 比 べ 転 倒 す る頻 度 が高 く, 歩 行 可 能 な時 期 の み で な く, 車 椅 子 レベ ル に な って も転倒 は多 く, さ らに臥 床 状 態 に な って もベ ッ ドか らの転 落 が 起 き る。 これ はPSPの 転倒が, 単 に姿 勢 反射障害のみ に起因して い る ので はな く, 前 頭 葉 性 認 知 障 害 す なわ ち, 注意 力, 洞 察 力 が低 下 し危 険 に対 する認 知 力 が低下し, 環 境 依 存 的 に行 動 す るた め に, 頻 回 か つ ダ イ ナ ミ ックな 転 倒 に つ な が っ て い る. ま た, 前 頭 葉 徴 候 (把 握 反 射, 視 性 探 索 反 応 な ど)の た め, ベ ッ ド周 囲 に お いて あ る も の に手 が伸 びつ か も うと して, ベ ッ ド柵 を乗 り越 え て, あ る い は ベ ッ ド柵 を 自分 で は ず して転 落 す る こ とが あ る. 転 倒 に と もな い外 傷 を 合 併 す る頻 度 も多 い。PSPの歩行障害はパ ー キ ンソ ン病 の小刻 み, 前傾歩行とは異なって いる. す くみ足, 突進現象 な どパ ーキ ンソン病 と共通点 もあるが, 不安定 歩行, 開脚歩行な ど様 々である. 不安定で開脚歩行 とな るため小脳が障害 された ときの歩 き方 と似 てお り, 脊髄 小脳変性症 と診断 され る場合があ る.
(2) 垂直性核上性注視麻痺 進行性核上性麻痺 という疾患名 は”進 行性”の”核 上 性注視麻痺”の 意味で ある. これ は 「随意性の眼球運動は障害されるが頭位変換眼球反射(頭 部を他動 的に動 かせば眼球は動く)は 保 たれ る」というもので, 眼球運動の核以遠は障害 されていないことを示 し, “核上性麻痺”と呼 ばれる. 注視麻痺の方向としては, まず上方 向への障害が出現 し, その後下方視への障害が出現する。進行すると水平方向も障害され, 眼球の位置異常もともなう. 上方視の障害 は加齢でも生じるので, 下方視の障害が PSPの特徴である。この注視麻痺は発症初期には認 め られないことを念 頭に置く必要がある. また, 注視麻痺が出現しなかった例も報 告されてい る
(3) パ ーキ ンソニズ ム PSPの パ ーキンソニズムはPDのパ ーキンソニズムとかなり異なる. まずPDでは頚部, 体幹より四肢に強い固縮 が あるが, PSPでは逆 に四肢よりも頚部や体幹に強 い固縮があり、 これ を体軸性固縮と呼ぶ. 初期には無動が認められても頚部, 四肢ともにまったく固縮が認められない場合が多 く, むしろ筋トーヌスが低下していることもある。 末期においても, 頚部, 体幹には 高度の固縮がみられても, 四肢の固縮は軽度で四肢を活発に動かす患者も多 い. 動作緩慢が認められるが, 一見無動にみえる患者が突然立ち上がったり, 突発的 な行動を起こすことがあるので注意が必要である. これは PSPの無動が単に動作 緩慢によるので はなく, 前頭葉性の無動, すなわち動作を開始するスイ ッチが入 っていない状態であるためで, いったん スイッチが入ると突発的な行動をとる. PSP患者が突然立ち上がって後方へひっくり返る現象は”ロケットサイ ン”と呼ばれている. PSPの姿勢はPDのように前傾前屈の場合もあるが, 初期には姿勢がよ く, 頚部から下は側面からみるとまっすぐである場合が多い. 進行期になると頚部が後屈する. 頚部後屈は原著で強調されたが, 実際にみられるのは進行期になってからであることに注意する必要がある
(4) 前頭葉徴候 ・前頭葉性 の認知障害 病理学的研究か ら, PSP病変は大脳皮質, とくに前頭葉に広 がってい ることが明 らかに された。 PSPでは 把握反射, 視覚性探索反応(目の前のものを手をのばしてつかむ), 模倣行動(指示されないのに目の前の動作をまねる), 使用行動(指示されないのに目の前の道具を使う)などの前頭葉徴候が初期から高頻度に出現するのが特徴である. PSPは 皮質下性痴呆と位置づけられてきたが, その本質は前頭葉性痴呆である. 動作の開始障害(無動, 無言), 終了の障害(保 続), 行為の抑制障害(前述の模倣行動, 使用行 動), 環境依存 的行動などが出現する. アルツハイマー病などと異なり, 見当識障害や, 記銘力障害はあっても軽いのが特徴である. 長谷川式簡易知能評価 スケール の下位項 目では, 前頭葉の機能低下を示す”語彙の流暢性(野菜の名前)”の得点が 初期から落 ち, アル ツハ イ マ ー病やレビー小体型痴呆などで初期から障害される”記憶の遅 延再生”の項目は比較的よく保たれる. うつ的になる例も報告されているが, 一 般 的には病識が乏しく, 深刻感がない, 屈託がなく, 多幸的である点で, PDとは対照 的である.
(5) 言 語 障 害 ・嚥 下 障 害 PSPでは言 語 障 害 ・嚥 下障害が出現する. PSPの 言語障害は, 初期から認められることが多 く, 出現時期 (中央値)は2-3.4年と報告 されている. 言語障害のtypeとしては, slurred(不明瞭), 無言, 小声, 吃音, 構音障 害、 爆発性, 大声, 同語反 復, 反響言語, 早口などさまざまである. この中で最も多 いのはslurred speech で, 一 見 脊髄小脳変性症の ような言語障害になる. PSPに おける嚥下障害は, 初期には少なく, 出現時期(中央値)は3.5-4.4年と報告され, 経 管栄養が必要となるのに7年3ヵ月(中央値)と報告されている. 初期の嚥下障害はPSPの生命予後に影響を与える要因であり, videofluolographyを 含 め た 病 態 の評価および治療が重要である
(6) 小脳症状 小脳はPSPの主病変部位であり, 歯状核では神経細胞脱落, グルモ ー ス変性, 小脳白質にはcoiledbodiesなどのグ リア細胞内封入体が観察される. 症 例によってはプルキンエ細胞も減 少する. PSPの 臨床症候の中には, 小脳症状が 少なからず存在する. 前述の言語障害の特徴もslurredが多い, 歩行障害もwide-basedで 不 安定であり, さらに初期には四肢の固縮はなく, 筋 トー ヌ スが 低 下 していることもある. このような症候があることから初 期 に は脊 髄 小 脳 変 性 症 と臨 床診 断 され る場 合 が 少 な くな い. 病理学的に小脳病変が高度の場合 は, 臨床的に四肢の小脳性運動失調を呈し, 画像上小脳萎縮をきたす例も存在す る.
(7)機能 予 後 ・生 命 予 後 ・死 因 PSPで はADL低 下 の進 行 は速 く, 湯 浅 班 に お け る剖 検 例 の検 討 で は車 椅 子 が 必 要 とな るの は発症 か ら2.7年, 臥 床 状 態 に な る の は4.6年 で あ った(図1). PSPの 平 均 罹 病 期 間 は5-9年 と い う報 告 が 多 い が, 1年 か ら24年 と症 例 に よ りか な りの 差 が み られ る. 50%生 存 期 間 は わ れ わ れ の臨 床 例 の検 討 で は6年、 湯 浅 班 の 剖 検 例 で の 検 討 は5.3年 で あ っ た. 死 因 は肺 炎 が 最 も多 く, そ の他 の 感 染 症, 心血 管疾 患, 窒息, 悪 性 腫 瘍, 突 然 死 な ど も 報 告 さ れ て い る6)7). 生 命 予 後に関しては, 性, 発 症 年 齢 は生命予 後 には影響 しないとい う報告 が多 く, 発症早期に嚥下障害がある場合 は, 生 命予後が不良 であ る6)