皮質下血管性認知症SVDの診断と治療

連続剖検では AD46% 血管性8% 混合型24%と混合病理による比率が高い
VCI 血管性認知障害: 純粋に血管病変によるもの以外に混合型、脳卒中後認知症、血管性軽度認知機能障害を含む 高位の概念として提唱。
大血管閉塞で大小の多発梗塞による多発脳梗塞性認知症 皮質
小血管病変による小血管性認知症 皮質下
記憶に重要なStrategic single infarct dementia  皮質または皮質下
SVDは 皮質に分布する小血管病変(アミロイド血管症:アミロイドの沈着は皮質・皮質内血管に限局)を含まない小血管性認知症の概念
遺伝性血管性認知症には CADASIL CARASIL Farby病など
穿通枝の細動脈硬化は リポヒアリノーシスとよばれラクナ梗塞や出血の原因となる。一方、白質の髄質動脈では中膜平滑筋細胞の変性と中外膜の膠原繊維の増生がみられ、フィブロヒアリノーシスと呼ばれ、内腔の閉塞はまれだが、血管反応性が低下するため白質の慢性低灌流の原因となる。これらの細動脈硬化は高血圧を共通の基盤とするため白質病変とラクナ梗塞は通常混在する。以上から ビンスワンガー型脳梗塞と多発ラクナ梗塞性認知症に対し、SVDの名称が汎用される。ラクナより白質病変の関与が大。

ビンスワンガー
危険因子 加齢、高血圧、糖尿病、喫煙、低教育 
症状は認知障害 歩行障害 アパシー 抑うつなど非特異的
白質→実行機能障害が主体、高度なほど歩行障害の増悪傾向が強い 
神経症状は 病変の程度や分布に応じて、固縮・姿勢反射障害を伴うパーキンソニズム、偽性球麻痺、錐体路障害、失禁などで健忘は比較的軽度、前頭葉機能を反映する実行機能障害や判断力の低下が目立つ。血圧の日内変動ではノンダイパーが大部分。血小板凝集や凝固線溶能の更新、特に脱水、感染症などに伴って凝固能が亢進するときに神経症状が増悪しやすい。
慢性虚血によってグリア細胞が活性化 MMP2活性化(ミエリン塩基性たんぱくMBPを分解する) BBBの障害や炎症性サイトカイン、フリーラジカルの放出で オリゴデンドログリアのアポトーシスを誘導する。
認知症群では 前頭領域をはじめとする広範な領域において、パーキンソニズム群では外側線条体において機能低下が指摘されている。同じ程度のびまん性白質病変であっでも有症候群では灰白質の機能障害をきたしていることが判明。白質障害は通過線維を障害してニューロンの機能障害を惹起する。病変は純粋な脱髄ではなく、進行に伴って軸索障害を呈する。軸索障害が進行するにつれて有症候となっていく。

SVDとAD
合併頻度は偶然より高率。機序として脳血管へのアミロイド沈着による二次的循環障害が指摘されている。AD脳にはアミロイド血管症が70-100%と高率にある。アミロイド血管症はそれ自体が皮質小動脈のBBBを破壊して認知機能低下にの原因になるほか、破綻や閉塞を生じやすく、脳葉型出血や微小出血MBs クモ膜下出血、CAArelated inflammation  皮質下微小梗塞を惹起する。また皮質領域での血管狭窄から深部白質の血流低下をきたし、白質病変の原因となる可能性がある。SVDは半数が緩徐進行型でADとの鑑別が問題 CAAによるMBSは皮質・皮髄境界、通常の高血圧による基底核、視床などに皮質下領域のものと分布が違う。ADの白質病変は 皮質アミロイド血管症による白質低灌流やワラー変性の関与も推定される。海馬萎縮はADほど強くないが、数か月の慢性低灌流負荷で実験的にも再現可能。
SVDの治療
血圧の管理と抗血小板薬 白質病変は微小出血を伴うことが多いため、抗血小板薬の使用は血圧を厳重に管理したうえで必要に応じて考慮する。血管内皮保護作用を併せ持ち、出血性合併症が少ないシロスタゾールが望ましい。抑うつには SSRI 自発性の低下には少量の塩酸アマンタジン 焦燥や幻覚妄想には抑肝散、テグレトール、少量のミアンセリン(テトラミド)、非定型向精神薬。白質病変によるコリン神経系の障害から AChE-Iが有効との報告あるが、保険適応外。