分子標的治療薬の充実 ゲノム医療の進歩

近大 腫瘍内科米阪医師 産婦人科 中井医師 の大阪府医師会研修会からのブラッシュアップ
2010年 非小細胞癌 日本人の30%に EGFR遺伝子変異 欧米は10%
当時のfirst lineは シスプラチン+ドセタキセルで 奏効率30%
EGFR阻害剤イレッサの奏効率75% 加えて吐き気や 好中球減少 倦怠感がない
EGFRの遺伝子T→Gで EGFRのチロシンキナーゼの働きが常時ONになり癌細胞を活性化している この阻害剤は癌細胞の増殖シグナルを遮断する
EGFRの遺伝子変異のような疾患発生に重要な遺伝子変異 ドライバー遺伝子という

分子標的薬
変異遺伝子 読み方 薬名 
BRAF ビーラフ   タフィンラR
ALK  アルク    アレセンサ 4%に陽性
EGFR タグリッソ
KRAS ケーラス   ルマケラス 40年前に発見され、2022年上市
MET メット    タブレクタ
NTRK エヌトラック ロズリートレク ヴィネラックビー 癌種問わず
ALK アルク 遺伝子変異EML-ALK融合遺伝子 4%のみ ALK阻害剤 
ROS1 ザーコリR 
RET

KRAS  日本人の大腸癌の3割
BRCA  ゼジュークR 乳癌 卵巣癌 すい臓がん 前立腺癌
MSI  キートルーダ
HER2 ハーセプチン+パージェタ エンハーツ(HER2+抗がん剤デルクステカン)
FGFR ヘマジール 肝内胆管癌

遺伝子変異は 発がんやがんの進行だけでなく、治療薬への耐性の原因にもなる
大腸癌 肺癌ではKRAS HER2 MET遺伝子等の異常が EGFR阻害剤などへの耐性をももたらす

進行癌の長期生存が一部で可能
腫瘍細胞の遺伝子変異が多い症例で 免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果が高い
一つ一つの遺伝子変異を調べる→2019年がん遺伝子パネル検査Foundation One 腫瘍組織あるいは血液を用いて エキスパートパネル(カンファ) 標準治療を終える予定の元気な人 希少癌で標準治療がない人が対象
リキッドバイオプシー 組織の取りにくい膵癌などで 血液中のDNAを調べる2021年8月より保険診療
組織と血漿の一致率75%
家族性腫瘍 体細胞遺伝子変異は後天性 生殖細胞の遺伝子変異 BRCAブラッカHBOC DNA修復に関与 乳癌の5% 乳癌11.8% 前立腺癌6% 膵臓癌の4-7%
PARB阻害剤 リムパーザ奏効率 乳癌50% 卵巣癌30% 前立腺癌33% 髄象嵌50%
①TMB 100万塩基対あたりの変異数 メラノーマや肺癌は高い >10で 奏効率29%  <107% 
②MSIマイクロサテライト不安定性 DNA修復後の遺伝子変異のため 修復できない
T細胞の TCRと TumorのHML T細胞のPD-1に対してTumorのPD-L1抗体がブロック
子宮頸癌 CDDP+PTXパクリタキセル ⅢAまでは5年生存 50% ⅢB期 アンメットニーズ 30%ペムブロリズマブ 15%は長期予後が改善
HPVは 免疫チェックポイント機構に影響を与えるとの基礎研究から 保険承認が待たれる特に放射線療法との相性がよい
子宮体癌 ⅣB 化学療法はある程度聞くが 効かなくなったら MSIで ペムブロリズマブ
MSIhighでなかったらレニバチニブで環境を整えてペムブロリズマブ
卵巣癌 卵管采の遺伝子異常が原因か (以前は 排卵の刺激といわれていたが)抗がん剤が効くが10年で死ぬ悲惨な癌ベバシズマブVEGFで腹水多い人は対応 透過性の高い血管による腹水には効く プラチナ抵抗性は使う 再発までの期間が大切  大部分は 高異形度漿液性癌でドライバ遺伝子無し BRCA変異を中心とした相同組み換え(2本切って相同組み換え)修復機構にかかわるパスウエイの異常が半数に認められPARPi ハープ阻害オラパリブが有効

大腸癌肝転移 EGFR阻害薬が効くがそのうち耐性 HER2遺伝子を増やす (Fish蛍光染色でみるとわかる)
EGFR愛が医薬体制肺癌に  HER2阻害剤が効くとか
卵巣癌の治癒も視野に入ってきたか