2023.7月内科学会雑誌
M蛋白血症の疾患スペクトラム
わかりやすいので雑誌からアップロードしました。
成熟B細胞は 形質細胞に分化するが、その最初の段階でIgM分泌するリンパ形質細胞となり この段階で腫瘍化すると原発性マクログロブリン血症、
次の形質細胞の段階で腫瘍化すると形質細胞腫瘍となる さらに形質細胞腫瘍は段階に応じて
MGUS monoclonal gammopathy of undertermined significance 無症候
くすぶり型多発性骨髄腫 無症候
症候性多発性骨髄腫
形質細胞白血病までのスペクトラムがある
それ以外に
腫瘍細胞の産生する単クローン性γグロブリン(M蛋白)
沈着による臓器障害の疾患群 ALアミロイドーシス、MGRS)
自己抗体活性に起因する 寒冷凝集素症
腫瘍性形質細胞が高サイトカイン血症を誘発する
POEMES症候群 (クロウ・深瀬症候群)
さらにM蛋白を伴う進行性筋萎縮性疾患
原因の特定できない心不全・不整脈、腎障害、浮腫、末梢神経障害、筋力低下・筋萎縮、胸腹水、肝脾腫、内分泌、貧血などを呈する患者さんに直面したら、M蛋白の有無を確認すること
若年者 70歳前後で合併症がない 大量メルファラン+自家造血幹細胞移植
高齢者 メルファラン+プレドニゾロン の時代から
サリドマイド
プロテアソーム阻害剤
抗CD38抗体
さらにBCMA B細胞成熟抗原を標的としたキメラ抗原受容体導入T細胞
BCMAとT細胞上のCD3抗原に対する二重特異抗体
B細胞や形質細胞の除去による低γグロブリン血症やT細胞の過剰刺激によるT細胞疲労は感染リスクを高める
ALアミロイドーシスには ダラツムマブ、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメサゾンDara-Cy-BorD 療法で血液学的奏効がえられれば、沈着臓器の機能回復もえられるようになった
POEMES症候群に対するサリドマイドの有効性
M蛋白の腎毒性によるMGRSにはボルテゾミブによる尿蛋白、腎機能改善効果
IgMκ型M蛋白による寒冷凝集素症に ベンダムスチンやブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤の有効性
骨髄腫細胞は骨髄内の微小環境において周囲の細胞と相互作用し、特徴的な病態を呈する 骨髄腫細胞は接着因子を介して骨髄間質細胞に接着し、サイトカインの分泌促進で、増殖のアドバンテージを獲得している
産生されるM蛋白は 腎に沈着し円柱腎症の原因となり、アミロイド原性を有すると心、腎、皮膚、消化管、神経に沈着して、ALアミロイドーシスを引き起こす M蛋白症により血清の粘調度は更新し、頭痛、めまいなどの過粘調症候群をきたす、一方正常免疫グロブリンは著明に抑制され骨髄では主にせけ赤血球系が抑制される もっとも特徴的なのは骨であり、骨髄腫細胞は骨髄間質細胞とともにRANKLを発現し、破骨細胞を活性化させる一方、骨芽細胞を抑制する物質を分泌するた、め 骨破壊の周囲ウニ骨形成機転が働かず、punched-out-lesionsとよばれる著明な骨破壊病変が形成される 骨病変は72%に認められる 脊椎病変が脊髄を圧迫し、鹿島費などの脊髄横断症状をきたすこともある
MGUS 血中M蛋白3g未満 尿中M蛋白500mg未満 骨髄単クローン性形質細胞10%未満 無症候
くすぶり型多発性骨髄腫 血中M蛋白3g以上 尿中M蛋白500mg以上 骨髄単クローン性形質細胞10-60% 下の骨髄腫診断事象やアミロイドーシスをきたさない無症候状態
症候性多発性骨髄腫 骨髄単クローン性形質細胞10%以上で CRABや悪性のバイオマーカーSLiM Sixty 骨髄単クローン性形質細胞60%以上 Light chain 血清κ/λ比100以上 M MRIで複数の巣病変の一つ以上を有する場合に診断
無症候性であってもSLiMを有する例は 2年以内に80%が症候性となる事から治療介入となっているまたくすぶり型でさらに治療介入群をわける検討もされている
形質細胞腫瘍ではMGUSの段階で すでに14番染色体の転座などの一次異常が存在し、二次異常の蓄積により次に進展する これらの異常は予後に大きく関与
標準的治療戦略
現時点では根治困難 MMの分子遺伝学的多様性が大きいことが関与
増殖活性の低い腫瘍細胞が存在することや合併症が多いことから古典的多剤併用療法の効果は乏しい
診断基準
貧血 Hb≦10 頻度は低いが白血球や血小板低下もある M蛋白は赤血球膜荷電に影響し、連銭形成が認められる52%にあり 末梢血中の形質細胞が20%≦で 形質細胞白血病と診断されるが5%≦で既に予防不良。 総蛋白上昇は診断の手掛かりになるが、血中M蛋白のない BJ型と非分泌型は正常免疫グロブリンの抑制により総蛋白は低下する。高カルシウム11以上と腎機能障害Cr2以上は診断事象10%と15%にあり アルブミン低値、β2ミクログロブリン高値、LDH高値は予後不良因子
M蛋白スクリーニング 血清と尿のの蛋白分画検査
IgG型は血清γ分画に
IgA型は血清β分画に
IgD型はピークが低く注意
BJ型と非分泌型は血清γ分画は平坦化
M蛋白がŁ鎖のみのBJ型は尿中に排出され、尿蛋白分画でピークが検出される
M蛋白が検出されたら次は 免疫固定法(=免疫電気泳動法)によりH鎖クラスとL鎖タイプを同定
血清FLC free light chain 骨髄腫細胞から産生されるL鎖を反映し、κ/λ比はM蛋白優位に大きく偏る
感度が高く、非分泌型骨髄腫やALアミロイドーシスの微量L鎖の同定や治療効果の判定に使用される
全身MRI 脊髄圧迫症候群の局所診断に必須 5mm以上の巣病変は悪性のバイオマーカー
次は骨髄検査 骨髄の形質細胞割合は診断に必須 10%以上 60%以上は予後不良
骨髄腫細胞の同定や単クローン性の診断にはフローサイトメトリー、CD38gatingで同定し、細胞質内κ鎖とλ鎖の偏りにより単クローン性を判定する
骨髄腫細胞は分裂像が得られにくく染色体解析は困難のため、14番染色体の転座など基地の異常の検出にはFISH法が用いられる
サリドマイド 不可逆的末梢神経障害のため現在は使用されず代わりに 誘導体のレナリドミドL LEN、ポマリドミドPOM P は血管新生抑制よりも抗炎症効果が優れており 蛋白分解を司るCRBNが標的分子で、免疫調整薬が結合すると CRBNが通常と異なるたんぱく質を分解するようになることが主要な作用である。内服治療であるLD療法がメインで、POMはより抗腫瘍活性が強く、CRBNの基質活性変化もLと異なることからLEN体制でも効果が期待される
PI プロテアソーム阻害剤 プロテアゾームは細胞周期にかかわるキナーゼや不要なたんぱく質を分解し、細胞増殖や生存に必須の酵素。これに対するPI ボルデゾミブBTZ Bまたは商品名VelcadeからV
続いてイキサゾミブIXA カルフィルゾミブCFZ Cまたは商品名VKyprolisからK
抗体薬
抗CD38抗体薬 ダラツムマブ(Dara) Daraの上乗せ効果
初発MMの治療
若年者
導入化学療法 腫瘍細胞の速やかな現象、MM関連事象の改善目的に3-4クール
BCD B シクロホスファミド D
BAD B アドリアマイシン D
BLD B L D
末梢血肝細胞採取 G-CSF 単独+プレリキサホルも(造血幹細胞と骨髄間質細胞の結合を媒介するCXCR4の拮抗薬)
自家末梢血肝細胞移植併用大量化学療法 メルファラン200mg/m2 のあと凍結しておいた幹細胞を解答し速やかに投与、血球回復まで無菌室管理
維持療法 無投薬経過観察から骨髄毒性の軽い新規薬剤 LENやIXA
高齢者
Dara+LEN 継続
Dara+VMP 9コース
または Daraを用いない VMP療法やLD療法や減量BMD療法も