慢性咳嗽

関西医科大学 呼吸器腫瘍アレルギー内科 石浦先生の講演より
慢性咳嗽 8週間以上 一般内科の初診理由一位
慢性湿性咳嗽は気道の過分泌が診断と治療の標的
 副鼻腔気管支症候群      去痰剤、マクロライド
 後鼻漏            ヒスタミンH1拮抗薬 ステロイド 抗菌薬
 慢性気管支炎         禁煙
 限局性気管支拡張症      抗菌薬、切除
 気管支喘息による気管支漏   ステロイド
 非喘息性好酸球性気管支炎   ステロイド
  肺がん
 気管支食道漏         漏孔の閉鎖
慢性乾性咳嗽は咳嗽そのものが標的
 アトピー咳嗽         ヒスタミンH1、ステロイド
 咳喘息            気管支拡張薬、ステロイド
   喘鳴(強制呼気でも)なし 呼吸困難感なし
   気道過敏の亢進あり
   気管支拡張薬が有効
   咳感受性の亢進なし
   レントゲンで異常なし
 ACE             中止
 GERD            ヒスタミンH2拮抗薬、PPI
 間質性肺炎 肺線維症
 心因性
 気管支結核
 肺がん

実臨床では慢性乾性咳嗽と考えたなら 
①気管支拡張剤(β2吸入・経口メプチン100mg/日、テオフィリン400mg/日)軽快すれば咳喘息よりなので継続 不十分なら
→②吸入ステロイド→③短期間経口ステロイド→④ヒスタミンH1拮抗薬+αとしてLTRA(シングレア、キプレス、オノン) 
アトピー咳嗽寄りならまず①→きかないので④→②→③ 
大事なことは咳喘息では胸部CTで気道壁肥厚=気道リモデリングが示唆されるので軽快後も長期吸入ステロイドを続けること。 
アトピー咳嗽軽症例:まずサルタノール1-3push スピロペント40mg ジルテック10mg 
中等症例:咽頭掻痒感が続き、吸入ステロイドが必要となる 
重症例:最初から吸入ステロイドを併用し、足りなければ経口ステロイド10mgをかぶせる。よくなれば治療終了。

8週間以上続く咳嗽は感染性咳嗽ではない。百日咳は例外です。
喘鳴wheezingをまず聞くこと→喘鳴あり→気管支喘息、心不全
強制呼気で喘鳴なし→これが狭義の慢性咳嗽といわれるものでアレルギーの関与が大きいことがわかってきた。

咳嗽にはproducive cough いわゆる湿性咳嗽とnonproducive cough 乾性咳嗽があり、少し漿液性の喀痰をともなうようなものは乾性です。
慢性乾性咳嗽と治療
頻度1 好酸球性炎症 咳喘息  気管支拡張剤、ステロイド
頻度2  好酸球性炎症  アトピー咳嗽  (気管支拡張薬は効かない)ヒスタミンH1拮抗薬、ステロイド
頻度3 副鼻腔気管支症候群  去痰剤、ステロイド
頻度4 GERD  2.1%
ACE阻害剤の副作用
間質性肺炎
心因性
気管支結核
肺がん 

好酸球性気管支炎
咳喘息:咳喘息は末梢気道にアレルギー反応に起因する好酸球が増える。主体は気道平滑筋の収縮で気道過敏性亢進によるもの。咳受容体の感受性亢進はない。気管支拡張剤が有効で気管支喘息と検査項目、治療反応も同じ 喀痰や末梢血の好酸球増加 呼気NO増加 咳喘息では気道リモデリングで気道壁肥厚があり軽快後も長期吸入ステロイド療法。
アトピー咳嗽:気道過敏性はない 中枢気道のアレルギーで咳感受性が亢進 呼気NOは低い アトピー咳嗽では治療終了 予後良好、季節性に起こってもその時のみ

治療の流れ
①気管支拡張剤テオドール400μg+β2刺激経口メプチン100μgまたはスピロペント40mg/日
②+吸入ならサルタノール1-3パフ/日これで軽快すれば咳喘息寄りと考えて、
吸入ステロイドBDP 600μg/日ベクロメタゾン(キュバール)
→FP800μg/日フルチカゾン(フルタイド)→軽快傾向で減量400μg/日、
短期経口ステロイド(プレドニン10mg/日)、ヒスタミンH1拮抗薬(ジルテック10mg/日)やロイコトリエン拮抗薬(LTRA+Th2-Iサイトカイン阻害剤)へと進む。
無効であればアトピー性咳嗽寄りと考え、ヒスタミンH1拮抗薬、吸入ステロイド、短期経口ステロイドへとシフト。

ともに好酸球炎症なのは同じ。違いはアトピー咳嗽は主要気管支、咳喘息は末梢気道の炎症 この違いはアレルゲンの大きさから。粒子の小さい順にハウスダスト、黄砂・カビの胞子、花粉はもっと大きい  
粒子小 吸入ステロイドはキュバール オルベスコ フルティフォームなどのエアゾル(dMDI) 
粒子中 シムビコート パルミコート アズマネックス シンビコート・パルミコートは朝夕高用量から 
粒子大はレルベア  アドエア  フルタイド(すべてDPI)
ハウスダストの主成分はダニの死骸 生きていればアレルゲンにならないが、夏に大量発生したものが、死んでバラバラになり秋の寒い日に飛ぶ

副鼻腔気管支症候群  
好中球気道疾患 少量長期エリスロマイシン療法(小児用50mgCAMでも)+少しのニューキノロン
レントゲン異常 上顎洞の粘膜肥厚・鏡面像形成、前額洞 の低形成  前額洞はマイクロビライの運動でできるのでこれがわるいと低形成に 

百日咳抗体 毒素に対するPT ーIgG抗体 菌体表面の接着因子FHAーIgG抗体
人に広めないことが肝心 菌が死んでも毒素で咳がでつづける 百日でピタッと止まる

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アトピー咳嗽の機序
アトピー咳嗽は、喘鳴がなくアトピー素因を示唆する所見が1つ以上(RASR 症状 好酸球増加)あり、気道過敏性が正常範囲で、咳感受性が亢進しており、気管支拡張薬が無効。
アトピー抗原をAPC抗原提示細胞がTH0に提示し、活性化ヘルパーT細胞Th1、Th2、Th17に分化。Th2はインターロイキン4を浴びたら抗原特異的にB細胞を活性化しIgE、IgGを出させ、 インターロイキン5を浴びたら好酸球を活性化する。末梢気道には好酸球炎症が及ばず中枢の気管支のみ。咳喘息はもっと末梢の気管支の炎症。気管支鏡検査を全員にするのは大変なので呼気NOで代用。中枢のみならNO低く、末梢までならNO高い。おなじアレルギーなのに起こる場所に違いがあるのは、咳喘息は微小粒子(ハウスダスト) アトピー咳嗽は粗大粒子(黄砂、カビ)
吸入ステロイドの粒子径分け
(小)キュバール・オルベスコ・フルティホーム
→シムビコート・パルミコート・アズマネックス
→大レルベア・アドエア・フルタイド
咳喘息に使うなら オルベスコ・フルティホーム  
アトピー咳嗽に使うなら レルベア・アドエア  
末梢と中枢の中間の炎症なら パルミコート高用量!!

副鼻腔気管支症候群 SBS
8週続く、呼吸困難感のない湿性咳嗽で、後鼻漏や鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎症状がなく、口腔鼻咽頭における 粘液性あるいは粘膿性の分泌液 副鼻腔炎を示唆する画像 マクロライド系抗菌薬や去痰剤が有効 少量長期エリスロマイシン療法で SBSがもつ粘液線毛輸送能の障害が改善される  少量長期エリスロマイシ は時間半年かかるのでOFLXオフロキサシン(タリビット)を追加すると2か月で改善する。

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