平衡(バランス)

めまい時の身体所見は
・注視眼振(眼振が注視で抑制されない) 
小脳片葉と前庭神経核は目を止める。そのため障害されると右を見たら止めれず行き過ぎ中央に戻ろうとしまた右を見る(右への眼振)を繰り返します。末梢性障害は方向固定性 中枢性は方向交代性になる。
・追跡眼球運動 
ゆっくり動く対象物の速度、加速度を分析し対象物の速度に合わせ眼球を滑らかに動かす 前頭眼野、背外側橋核、MT及びMST野、有線野、小脳虫部と片葉、前庭神経核が関与しており、回転ずしを目で追うような動作でがくがくします。
・衝動性眼球運動 
眼球の位置を素早く移動(パルス)し保持(ステップ)
水平方向のパルス:橋にある傍正中網様体 
垂直方向のパルス:中脳にある内側縦束吻側間質核 
水平方向のステップ:前庭神経内側核と舌下神経前位核 
垂直方向のステップ:カハール間質核 
もぐらたたきの際の眼球運動で 脳幹障害を判定できる。
・Rebound nystagmus反跳眼振 
正面視ででず、側方注視(注視方向性の眼振が誘発)から 正面に戻すと眼振がでるもので小脳および脳幹の障害を意味する。
・Head Impulse Test (HIT) 患者の頚部をゆっくり左に10度回転し、検者の顔を注視させて、次に頭部を速く右にふり正中を向かせると(head impulse) 半規管機能が正常であれば前庭眼反射で検者を注視できますが、機能低下で反射が不十分であると眼位と指標の間にずれができ、ずれを補正して指標をとらえるためがくがくと急速眼球運動(catch up saccade)が生じる。前庭神経炎で認めます。右に振った時に出れば右の障害です。BPPVではHITは正常のことが多い。

HINTSはHITにdirection-changing nystagmus(方向交代性眼振)注視方向により眼振の向きが異なる所見とskew deviation(斜め方向の眼偏倚)skew deviationは両側眼位がズレる所見を加えたもの 難聴を加えると HINTS plus
・輻輳
・VOR (前庭動眼反射) cancellation  頭部運動を伴う視標追跡での運動誘発性眼球運動のdysmetriaを見る 行き過ぎ、足りない

めまい診断のアプローチと鑑別疾患
1、Timing:繰り返すか急に出て続くか
 EVS(Episodic Vestibular Syndrome 反復性前庭症候群)
 AVS (Acute Vestibular Syndrome 急性前庭症候群)
2、Triggers:頭位変換に伴うか
 EVSなら
 triggered EVS BPPV, CPPV, orthostatic hypotension
 spontaneous EVS migraine, menier, vasovagal, panic disorder
 AVSなら
 post exposure AVS 外傷、薬物(抗痙攣、CO中毒、アミノグリコシド)
 spontaneous AVS 前庭神経炎、脳卒中、Chronic vestibular(前庭神経) syndrome
3、Targeted bedside examination:
 HINTSやDix-Hallpike、spine rollで評価

診察のしかたは
1. 病歴、神経診察 
本当にめまいか 失神ではないか
再発を繰り返すか
頭位変換に伴うか、安静時か
発作の持続時間は
関連兆候 耳鳴り、難聴は
頭部外傷があったか
脳幹・小脳症状がないか 複視(眼球運動障害)、顔面麻痺、しびれ、構語障害、吃逆
内耳性所見がないか 蝸牛症状・耳鳴り・難聴で内耳性(メニエル病)
2. 末梢性と思えば眼振を確認
まず頭位変換眼振 (Dix-Hallpike ディックスハールパイク法)座位で斜めをむいて急に懸垂頭位を取らせると数秒の潜時で回旋成分の強い上向き眼振が出現し、これが30秒以内に消失すれば後半BPPV(半規管結石症)。眼振がでる頭位で下になるほうが患側。
これが陰性なら次に頭位眼振検査で 側臥位(spine rollという)で方向交代性向地性眼振を認めれば外側半規管BPPV(半規管型)、方向交代性反地性眼振を認めた場合は外側半規管型BPPV(クプラ結石症)
持続性する方向固定性水平性眼振なら前庭神経炎 
3. 末梢性と思われても最後に必ず歩行させて異常がないか診察する(PICA病変は体幹失調とめまい・ふらつきしか症状がないことがあるので注意)
障害あれば脳卒中(小脳虫部)

  • 典型例を覚えておく→典型例でない場合は注意して診療にあたる
  • t-AVSの大多数はBPPV
  • めまいを訴える患者の脳梗塞に対するMRIの感度は80%程度→それなりに見逃してしまうことに注意
  • 病歴・神経所見にて中枢性めまいを鑑別せよ
    ・HINTS
    ・前失神を鑑別せよ
  • 眼振をしっかり見よ、誘発せよ
    ・フィレンツェル眼鏡
    ・Dix-Hallpike maneuver  supine roll test
  • 歩行できるか確認せよ
    ・Romberg test、継ぎ足歩行

BPPV
<特徴・診察>

  • 頭位変換によって誘発、潜時を伴う、回っているような異常感覚、発作の持続時間は1分以内
  • 耳鳴り、難聴は伴わない
  • 耳石が原因で、後半規管が80%程度、あとは外側(水平)半規管
  • Dix-Hallpike 法(後半規管)
    ・頚椎症に注意、患者にめまい増悪するが1分程度で治まることを説明
    ・右が患側なら 頭部を右45度回旋し、介助しながら臥位とし、頭部をさらに20度懸垂位にすると
    ・2-20sの潜時を伴い、検者からみて反時計回り=患側向き=右向きの回旋性眼振を認める
  • Supine roll test(外側半規管)
    ・Dix-Hallpike 法が陰性の時に行う
    ・仰臥位として天井を見てもらう
    ・一方へ急速に回旋させる
    ・典型的には、半規管型は床向き、クプラ型は天井向き水平性眼振

<治療>
非薬物治療

  • 後半規管型:Epley法:一番効果的と言われている
  • 外側半規管型:Barbecue rotation法
  • Semont positioning maneuver
  • リハ(Brandt-Daroff exercise):自宅で数日で直したい など
  • Gufoni maneuver

薬物治療

  • ルーチンには投与しない
    →転倒のリスク↑、代償が遅れる可能性
  • 投与するなら、抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、アタラックスP)、ベンゾジアゼピン(ジアゼパム)、制吐剤(メトクロプラミド)

めまいの処方
漢方の出番。救急薬の五苓散を筆頭に、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、真武湯などを駆使。慢性的なめまいには、星状神経節へのスーパーライザー照射もなかなか。 西洋薬では反復性の難聴や耳鳴を伴うようないわゆるメニエル的めまいにはメリスロンを、そうでなければセファドールを使う。 「めまい≒メニエル」というイメージだろうが、実際には本物のメニエル病にはなかなか遭遇しない。よって、メリスロンの出番はかなり少ない。 アデホスは、慢性化したメニエル的なめまいや眼精疲労が絡んでいそうな時には使うが、さほど出番は多くない。メチコバールも時々は使うが、効果を実感することは少ない。 セファドールは、デスクワークが多く肩こり持ちの人が訴える浮動性のめまい、いわゆる「頚性めまい」に使用すると、時に著効を経験する。テルネリンやノイロトロピンを併用すると、更に打率は上がる。 セファドールは椎骨脳底動脈系の血流を増加させ、前庭神経路を調節することでめまいを改善させると言われている。

外側半規管型 健側=めまいがましな方向にむく
外側半規管-クプラ結石型 患側=めまいが起こる方向に向く
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/77/6/77_583/_pdf

memai-pro.com  めまいプロ🔍興和株式会社 がわかりやすい。

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