失語

脳機能の局在は Broca野から始まったとされています。Broca失語(MCA上行枝の脳梗塞)、Wernicke失語(MCA下行枝の脳梗塞)の理解から進めます。

 むずかしいバッテリーはいりません。急性期より慢性期に引きずるのことで生活の質にかかわるので医療職、家族、介護職も大まかな失語類型を判断できるようにしておくことが大切です。古典分類の失語に固執することなく特徴を克明に記述することが重要で 特定の神経ネットワークの損傷による言語症状として着目する

①運動性の要素 
自発語:あいさつ 主訴 現病歴をさりげなく聞くことで文法、速さ、長さ、努力性、ためらい、発語失行を観察

②物品呼称:言葉がしゃべりにくいことはありませんかという導入で語健忘をスクリーニング  

③復唱 
単語 猫、狐、メガネ
二語 青い空、赤い花、夜が明けた
三語 今朝はご飯を食べました 春は桜の季節です 赤いバラが家の庭に咲いていました

④感覚性の要素
Yes/No 言語理解をみる
くじらは空を飛びますか? 鶏は卵を産みますか?

⑤口頭命令 
閉眼開眼 挺舌
左右の認識必要なもので左右失認もスクリーニング 
  左手で右の耳を触ってください
複雑な動作では失行も見ることになる  
  金づちで釘を叩く真似をしてください

⑥模倣動作をやらせる
言語理解でできないか 観念運動失行か 
言語指示でできないが真似ができる際は言語理解障害でできなかった可能性がある

⑦よみ 氏名といくつかの語句についてかなと、漢字の読みをチェック

⑧書字

発語と理解と復唱でみる
呼称障害と喚語困難はどんな失語にもあるので分類に使いません。

発語○  理解○ 復唱× 伝導性失語

    発語×~△ 理解単語レベルで○ 復唱× ブローカ失語

    発語○  理解単語レベルも× 復唱× ウェルニッケ失語

発語△~○ 理解 △~○  復唱○   健忘性失語

発語か理解か両方が×  復唱○  超皮質性失語

     発語○ 理解× 復唱○  超皮質性感覚性失語

     発語× 理解○ 復唱○  超皮質性運動性失語

     発語× 理解× 復唱○  超皮質性混合型失語

PNFA 非流暢性失語に下記のいずれか
 失文法 助詞などの機能語の脱落  たどたどしい電文体の発語
 音韻性錯語 めがね→めがえ    (対して語性錯語とは机→椅子)
 伝導失語の特徴
 失名辞 物の名前が出てこない  すべての失語にある

SD 
語想起並びに語の理解(再認)障害という言語障害
  右萎縮では相貌、対象物の視覚認知の障害
  内容の乏しい流暢性発話、呼称と理解に出現する語彙の喪失
  語性錯語、 復唱の保存が話し言葉の特徴
熟字訓など不規則読みの単語の読み書きが障害される表層性失読(失書)
  お忙しいですか?に「お忙しいです」と答える
  言語面のみでなく 共感性の消失、関心の狭小化

  

Logopenic

  自発語では流暢性の発語があるが、命題的になると発話困難で流暢性が損なわれ、頭語(文法)理解が障害、長い語句の復唱障害に関わる言語性短期記憶(音韻の把持の障害)  左側頭葉から頭頂葉領域の病変 ADが背景病理

千佳さんの場合

MCIはもともとADの前駆症状として提唱されたが、概念が拡大し、FTDを含むいろんな病因によってMCIが生じるとされるようになった。

別の概念として、mild behavioral impairment MBIという概念があり
①持続的な行動変化と軽度の精神症状(特に脱抑制)
②記憶障害は深刻でない 
③ADLは保たれている 
④認知症ではない

非健忘型単一言語領域MCIであるFT-MCI の概念では
①介護者より確認される行動、感情、言語の症状
②少なくとも一つの遂行機能検査での低下
③職業的、社会的、家庭的なADLが保たれている
④CTまたはMRIは正常か前頭葉の萎縮  
MBIよりは遂行機能や画像検査が求められ、MBIより厳しい

SDと失語の関係について

言語面における意味理解障害は意味理解全般の障害と同意義であり、意味理解障害を主症状とする失語は意味認知症であるとする考え方と他方、意味記憶とは意味するものと意味されるものとし、言語面での意味理解障害があっても、他の高次脳機能で意味記憶障害のない症例は意味認知症ではないとする考え方がある。一般的には意味記憶は後者の意味で使われ、高次脳機能全般に意味記憶障害を示す症例は意味認知症であるが、言語面に限定された記憶障害は失語として扱うべきである。認知症は人格全体の解体過程であり、多少の情意面での障害があるにしても、意味記憶障害、すなわち特定の知的機能の障害を主症状とする病態はATDなどの認知症と同等に扱うことは妥当ではない。意味性認知症という言葉も適切でない。発話は流暢で構音は正常で文法障害や音韻錯語は認められない。一方発話内容は空虚で、あれ、これなどのあいまいな表現や紋切り型の表現が目立つ。手袋を靴下というなど同一カテゴリー内での語性錯語が出現する。身近な語はそうでない語よりも保たれる場合が多い。呼称障害や理解障害は日常的物品だけでなく、動物名、食物名、身体部位、道具など広範な範囲に及ぶが、概念の喪失は完全でない。

レモンが動物でないことは理解しているが、バナナやリンゴとどう違うかは理解できない患者がいた。

虎がライオンに殺された 死んだのはどっちですか  正解  文法の理解は比較的保たれている

虎とネズミはどちらが大きいか は答えられない

復唱、書き取り課題は意味理解障害に伴う誤りが多少みられるが比較的保たれている。独自では患者は音韻を手掛かりに文章を読む。したがって不規則綴りの語が読めない表層失語の症状を呈する。健忘型相貌失認 物品の形態知覚は障害されず、正確な模写が可能

数や数の概念、計算は比較的保たれる。金銭を取り扱うことも可能。数字に関連したゲームやクイズも楽しむ。一方、家計を認識することができず、聴覚的に与えられた数と数字の照合ができなくなる。視空間認識は保たれ、道迷いもない 視空間認知に関する神経心理学的検査 線分の傾きの判断、点の計数、二次元空間の判断などの成績も正常範囲

聴覚において 非言語音の認識に障害、手触り、味、香りの認識や同定にも障害

運動巧緻性は低下しない。ピアノ演奏やゴルフも可能、しかし知識を必要とする行為、調理などはレシピが読めなくなるため遂行できなくなる。エピソード記憶は問題ない。約束した場所や時間を正しく記憶し、自分の身の回りの出来事もよく覚えている。ATDはエピソード的側面の記銘に障害。SDはエピソード的側面と、意味的側面の想起に障害がある

SDの運転

車間距離維持困難、右萎縮では視覚的な意味記憶障害が目立ち、信号無視、わき見運転、運転中に目印となる建物の認識不能が見られる。環境音失認も見られ、接近してきたパトカーや救急車のサイレンの意味が理解できずに交差点へのご進入も見られる

行動異常 自己中心性、行動柔軟性の欠如、感覚刺激過敏、危機感の欠如、食の好みの変化、強迫行動、などの行動変容が見られる。最も特徴的な症状は特定の決まりきった行動へのこだわりである。自己の障害は認識しているが重大な問題だと感じたり悩んだりすることはなく無関心。

皮質下の被殻や視床損傷でも言語症状が出る 復唱が容易が特徴で ほあkはあなとりー、音韻性錯誤、単語理解障害性老人自立度、喚語困難のすべてが程度の差はあっても存在する。

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